中華なべの焦げ付き防止・実践編

  • 中華なべの焦げ付き防止・実践編

 一般家庭の中華なべの手入れは、表面の油の幕を無くさないように洗剤を使わずに洗い、油を引いて保管。というのが普通と思っていたが、プロは洗剤でガシガシ洗って、油を引いたりもせず自然乾燥するだけ。
 それで、プロは全く焦げ付かないのに、素人はガビガビに焦げてしまう。何故か?
 というのが、今回のテーマなのだが、実は「鍋の表面に秘密がある」という。
 実は、焦げ付く鍋は表面に微細な焦げの粒子が存在して凸凹になっていて、これが原因だという。
 そして、プロの鍋は、鉄の酸化皮膜と油が樹脂状に変化した100分の2mm程度の膜で覆われているということだ。この膜は洗剤で洗っても落ちない。
 つまり、日頃の手入れは「きちんと洗剤を使って徹底的に洗う」ことで、焦げを追放するのが肝心で、油は関係ないということだ。油は使う時に鍋を熱したところに入れるようにする。

  • 焦げ付く鍋の再生術

 ということで、焦げる鍋を焦げない鍋に再生する方法。つまり、焦げを取って、酸化皮膜をつける。
 TVでは「大変だから旦那さんにやってもらいましょう」などと言っていたが、我が家では趣味の延長でやるのだ。

1.徹底的に焼き尽くす … 鍋から煙が出て、その煙も出尽くすくらい満遍なく焼き尽くすことによって、焦げ付きがポロポロになって落としやすくなる。

2.布やすり(200番)で徹底的に磨く … 焦げ、赤錆を完全に落とし鉄の色が見えてくるまで徹底的に磨く。これが重労働(^^;;
 ディーゼルの燃えカスにも似た炭素の真っ黒な微粉末がいくらでも出てくる。 とても硬くて、力いっぱいこすってもなかなか鉄の地肌は見えない。出てくる微粉末の始末も考え物で、風の有る屋外でやるくらいなら、台所の片隅に新聞紙を引いて地道にやったほうが良い。
 焦げの下から赤錆がのぞく場所もあり、これは削り落とすが、黒錆びは硬くて落ちない。この黒錆びはきっと最初に鍋焼きをしたときに出来たものだろう。
 もともと黒錆びを作るのが目的なので、これは無理やり落とす必要は無いと理解して無理しないものとする。(とにかく赤錆や、銀色の鉄そのものより圧倒的に硬い。銀色の鉄の表面は布やすりが削る感触があるのだが、黒錆びの部分はツルツルで歯が立たない。)

3.磨き粉で仕上げる … どのくらい磨けばよいのか加減が分からないが、繰り返し磨くうちに布やすりで削った微粉末と思しき黒〜茶の汚れが見えなく真っ白になったところで仕上げ終了と見なす。

4.再び焼く … 焦げ、錆びを落とし、金属色の出た部分を丹念に焼いていくと青黒く変色する。
 これで酸化皮膜が出来上がり。

5.油で皮膜を作る … 煙が出るほど焼いたところに、たっぷりの油を投入し、一度捨てた後にくず野菜をいためる。
 これで、油の分子が変化して洗剤では落ちない皮膜ができる。見えないけれど。
 よく冷ましてから再度洗剤で綺麗に洗う
 鍋肌が青黒く光って美しい。
 新品の鍋は「防錆材を焼いてから使う」と言うけれど、薬品を焼いた後、さらに黒錆びの皮膜ができるまで焼くことが秘訣。ということだ。

  • 使う

 というわけで、チャーハンを作ってみる。
 煙が出るくらい焼いてから、油を入れ捨てる。
 鍋をあおると、まるで新品のテフロン加工のフライパンのように、ツルツルに滑って米がサクサク宙を舞う。使用している油は普段より少なめなくらいだが、まるで「料理人」になったような気分である。味付けは変わらないけど…焦げによる失敗が無いから確実に思った通りの出来上がりだ。
 使い終わった鍋は、ピカピカ。焦げ付きの気配も無い。
 いつも「ためしてガッテン」のコツには感心しているが、今回のテクニックは並外れた力仕事を必要とされた。「こんなことなら、新品を買ったほうが楽だ…」と降参したくなるほど。
 だが、テフロン加工のフライパンも一年も使うとはじめの頃のツルツルが失せ、なんとなくこびりつき始め、やがては捨てざるを得なくなのに、鉄製なら焦げ付くようになっても、バリバリ布やすりで磨いて焼けば再生できる。
 「焦げない幸せ」と「粗大ゴミを出さない幸せ」。自己満足かもしれないけれどこの二つはハードな労力に見合う喜びだと思う。

ところで、webで「黒錆び」を検索したら「塗るだけで黒錆びFe3O4を赤錆Fe2O3に転換する」という薬品の話が山ほど出てきた。これって本当? どういう反応なのだろう。一種の還元反応になるから、還元剤を使ったとしても、常温で反応が進むのは難しそうだ。
 「水酸化ナトリウム水溶液を塗って水蒸気中で蒸し焼き」にすると強い黒錆びの皮膜ができるそうだが、高温を必要とせずに黒錆びを作れる秘密が知りたいな。
 まあ、磁石の力で赤錆を黒錆びに転換するという物凄い原理不明の商品もあるが… (でも買ってしまう人も居る)